Chapter 4 4th LEGACY  「感性に訴える」新世代のクルマづくり 4代目レガシィ
4th LEGACY image01
4th LEGACY image02

 
3世代にわたり熟成を重ねてきたレガシィに、新たな価値が求められていた。
レガシィを新たな地平に導くために、これまでの枠組みや手法を超えた、新たな挑戦が必要だった。
旗印となったのは「感動性能」というコンセプト。
乗る人の感性に訴えかける新しい価値に向け、次々と新機軸が打ち出された。

 

 
「感性に訴える」新世代のクルマづくり

 3代目でワゴンを究極にまで高め、B4というスポーツセダンを成功させたレガシィは、ドライバーズカーとして確かな地位を築き上げた。しかし自動車マーケットでの人気はミニバンやコンパクトカーに集中、いずれも持たないスバルは苦戦を強いられていた。
 こうした状況の中で、開発が進められた現行レガシィ(4代目)は、ジャンルを超越したブランドとしての価値をさらにアピールし、本物だけが持つ価値を評価してくれる人を惹きつけることが要求された。それにはクルマの機能を超えた、感性に訴えかける「新たな価値」を提案する必要があった。

LEGACY image03本質を守リながら新たな価値を追求する
 
ワゴンのマーケットが縮小しライバルが消えていく中で、それでもレガシィが一定の販売ボリュームを維持できたのは、クルマとしての本質的な機能や魅力を、たゆまず進化、熟成させてきたからであろう。
「次のレガシィがどうあるべきかを考えたとき、従来の性能や機能を熟成させていくだけでは、3年先、5年先にかならず行き詰まることが見えていた。これまでにない、新しい価値を提案しなくてはならない。そのためにはハードウェアの面だけでなく、クルマづくりの考え方や感覚的な面でも大きくブレークスルーすることが必要だった」 開発初期のコンセプトワークに携わった日月の言葉だ。
 レガシィが持つクルマとしての本質的な魅力を進化させながら、さらに時代に合った新しい価値を提案しなくてはならない。それは非常に難しい課題であった。

新しい価値とは何か?
 次のレガシィが提案する新たな価値としてプロジェク トメンバーがたどり着いたコンセプトは「感動性能」であった。日月は言う。
「レガシィも4代目を迎えると、すでに2台、3台とレガシィを乗り継いでこられたお客様がいる。もう一度レガシィを選んでいただくためには、常に新しい価値を提案していく必要がある。今の時代、エンジン出力が上がりましたとか新しいアイテムが付きましたというだけでは、新たな価値提案とはならない。お客様の感性に直接働きかけ、理屈抜きで新しさを実感していただけるクルマをつくらなくてはならない。それが『感動性能』だ」
 開発責任者を任された清水一良は、プロジェクトのスタートにあたってスタッフ全員に以下のように命じた。「4代目のレガシィをつくろうと思うな。まったく新しいレガシィをつくるという気持ちでやれ。すべてを見直し、一からつくり直さなくては目標とする『感動性能」は実現できない」

「感動性能」実現のために、拡幅を決断
 すべてを一から見直すために、一番大きな問題となったのはボディを拡幅するかどうかだった。あれだけ5ナンバーサイズにこだわってきたレガシィが、ここで説を曲げてもいいのかということであった。
 しかし時代は変わった。ユーザーから期待されるものも変わった。開発者としても新たに挑戦したい技術テーマが山ほどあった。走りをよくするためにトレッドを広げたい。デザインをよくするために寸法にゆとりがほしい。 重量を増加させず衝突安全性を高めるために、ボディ構造そのものを見直したい…。
 新しい時代のクルマとして生まれ変わるためには、まず全幅1,695mmという数字から解放される必要があった。新しいレガシィをつくるという強い意思のもとに、開発の初期段階でサイズの制約は取り払われた。

LEGACY image04
「4代目のレガシィをつくろうと思うな。 まったく新しいレガシィをつくるという気持ちでやれ」

 いたずらにサイズを大きくするのではなく、あくまでも必要とする性能を実現するギリギリの拡幅に抑えること。拡幅しても運動性能や取り回しのしやすさは、従来以上を確保すること。レガシィというクルマの本質を守りながら新しい価値をつくるために、開発陣は自らに高いハードルを課した。

すべての性能を高める鍵は「軽量化」
 拡幅してサイズを大きくすれば重量が増えるところを、逆に軽くしたのが現行レガシィの大きな特徴だ。軽量化は現行レガシィの開発にあたり、プロジェクトチームが真っ先に取り組んだテーマだった。
 車重を10%下げることは、エンジン出力を10%上げるのと等しい。ブレーキ性能も向上し、軽快なハンドリングにも効果絶大だ。さらに燃費や衝突安全性も向上する。つまり走りにも安全にも環境にも貢献するのだ。
 スバルが目指した軽量化は、従来あったものを外したり薄くする、あるいはただ素材を置き換えるといったレベルでは済まなかった。根本的な技術革新が必要だった。開発部門のみならず、生産技術部門や購買部門など、あらゆる部門からスタッフを集めて徹底した検討を重ねていった。
 試作車ができた。しかし、それはあらゆる面において合格点にはほど遠いものだった。車両開発のまとめ役を務めた増田年男が語る。
「この程度ではレガシィという名はつけられないという結論だった。『感動するか?』という言葉を評価基準においた開発でなければ、その状態でも商品として成立していたかもしれない。しかしそこには、私たちが目指す新しいレガシィの姿はなかった」
 最初の試作車の段階では、軽いだけで中身がともなっていなかった。開発チーム内では議論が繰り返され、足りない性能を補うアイデアを出し合った。
「走り出した瞬間に、違いを感じていただける仕上がりとなった。2000回転までエンジンを回しただけで、私たちが目指したものが何だったのかがお分かりいただけるはず」と増田は胸を張った。

感動を与えるデザインとクオリティ
 感動を与えるクルマづくりのために、開発チームの評価方法は、より感性を重視した方法で進められた。それはデザインにも顕著に表れている。従来はフォルムそのものよりもテクニカルスタンダードに定められた数値、基準に基づき、使い勝手のよさや安全性の確保などの機能性が優先されることが多かった。
 しかし、現行レガシィでは新たなアプローチがとられている。1mmや2mmといった数値を重視するのではなく、実際に乗ったときに感じる居住性や見え方、日常での取り回しなどを重視しようという考え方である。 「荷室の寸法が何mmだから荷役性が高いというわけではない。お客様はノギスを使って荷室の寸法を測るようなことはしない。実際に使って使いやすいことが何より大切なのだ」と清水は言う。

LEGACY image05「気持ちのいいエンジン」を追求
 エンジン開発にあたっては、水平対向エンジン本来の気持ちよさを追求することがテーマとなった。その重要な要素として、大林は「音」をあげた。
「ボロボロ…という3代目レガシィまでの独特の排気音はボクサーサウンドと呼ばれ、一部のユーザーに支持された。しかし本来の音は、もっと硬質で、軽快な回転とともに気持ちが高まっていくようなものだ。実際、スバル1000ではそのような音だった」
  従来のボロボロというサウンドは排気干渉によるもので、これを解消すれば低中速トルクが向上することが以前から分かっていた。しかし排気管の取り回しを変えることは極めて困難で、手をつけることができなかった。
 現行レガシィで、ようやくこれを一新することができた。排気干渉をおさえた等長等爆エキゾーストシステムを採用し、さらにエンジン周辺の車体構造を全体的に見直した。これによって水平対向エンジン本来の気持ちよさを備えた、理想のエンジンに生まれ変わった。

スバル史上初となる栄冠
 現行レガシィが発表された2003年、レガシィがついに日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
 授賞理由は「水平対向エンジン、独創的な4輪駆動技術を守りつつ、これを新しい時代の要求に応えて改良を続けた結晶といえる車。日本車として、世界に誇れるユニークな内容を持つだけでなく、中型セダンとして高い総合バランスを持つ」というものだった。
 初代以来、レガシィは何度も侯補にあがってきた。それがついに受賞したのは「クルマとしての本質を追求する」ということが認められる時代になったともいえる。この受賞が、スバルにとっては大きな自信となった。

 4代目レガシィが生み出したもの 

LEGACY image06

「SYMMETRICAL AWD」
軽量コンパクトな水平対向エンジン縦置きレイアウトをコアとするスバルの4WDシステムを、4代目レガシィからは世界共通で「SYMMETRICAL AWD」と呼んでいる。これにはスバル独自のメカニズムをより明確に打ち出したいという狙いがあった。
 ところで昨今、欧州のプレミアムブランドをはじめ、各メーカーがAWDを採用するようになってきた。この傾向に対し桂田は「こうなって欲しいと願っていた」という。なぜなら、他社が「AWDはいい」と宣伝してくれると「よく考えればスバルのAWDが一番いい」となる。ゆえにスバルのAWDの評価は、今後さらに高まるはずだ、というのが桂田の直感である。

 
image07 清水 一良 (しみず かずよし)
1973年入社。車体設計畑を歩む。初代インプレッサのボディ開発。2代目レガシィのボデイ開発。3代目レガシィでは商品開発を、現行レガシィではPGM(プロジェクトゼネラルマネージャー)を務める。
image08 増田 年男 (ますだ としお)
1981年入社。小型系車種の車体設計、衝突安全構造開発を担当。2代目レガシィからプロジェクトメンバーに参加し、車体構造のとりまとめを行なう。2代目インプレッサの商品企画のとりまとめを経て、現行レガシィの開発チームに参加。
  →トップへ The Spirit of LEGACY