「人々はクルマに乗ってどう愉しんでるかというと、やはり五感で愉しんでるんですね。五感のうちにはデザイン上の見た目や運転席に座った時の質感といった視覚や触覚、エンジン音の聴覚もありますが、やはり加速であったり、プレーキであったり、横Gであったりと、加速度を愉しむところが大きいんですよ。アクセルを踏んだらスーッと滑らかに出て行くのも理想かも知れませんが、やはりそれに乗っていると飽きがくる。あまり気難し過ぎてもいけないんだけど、アクセルを強く踏み込んだらガツンと来て「次からは少し気を付けよう」くらいの感覚が味わえる、ちょっと気難しいところも必要かなという気はしますね。そして重要なのがハンドリングのフィーリングです。運転していて、ドライバーが心地よさを最も実感するのは、ステアリングを通して入力したものが手元に戻ってくる感触なんです」
 世界のさまざまなメーカーのクルマに触れ、その長所を熟知している辰己。今回のインプレッサでは、玄人をも唸らせる、国産車ではトップレペルのハンドリングが実現できたという。
 「インプレッサはWRCのベース車両として生まれたスポーツ性の高いクルマです。したがって、実用一点張りではなく、非日常の愉しみを重視したテイストが求められます。ですが、今回のインプレッサは、従来のハンドリングの尖った部分を削って、若干マイルドな味付けにしたんです。刺激と滑らかさは相反するものと考えがちですが、実はそうではありません。乗ってもらえばわかりますが、コントローラブルになったことで限界が高くなり、結果的には速くなっています。非日常の走りをしても、安心して身を任せられるハンドリングを与えたことで、より多くのドライバーが刺激を享受できるクルマに仕上がっているはずです。スピードを上げたときに少しでも不安があるようでは、本当に良いクルマとはいえないでしょう。仮にそのクルマの性能をフルに使って走ることがないにしても、トライして見たくなる雰囲気と、それに耐える性能を持っていることで、所有する歓びが生まれるはずです。SUBARUの走りに対するこだわりに愛着を持っているお客様には、きっと満足していただけるに違いありません」
 真摯にクルマ本来があるべき走りに対して直球勝負を挑み続ける辰己英治。彼が今回目指したのは、荒々しい進化ではなく、『気持ち良く走ることができ』『安心感が高く』『コントロール性が良い』正常進化であった。
 そしてその結果が、ニュルプルクリンクで初めてインプレッサが8分を切るタイムとなって表われた。
クルマ作りは単純ではない。
ましてやコンピュータ上だけ作れるものではない。
過酷なコースをしっかり走り
そこで得られたひとつひとつのデータを分析し、次の実験車に活かし、さらにまた去り次のクルマ|ご活かす。
そういう地道な積み重ねが必要なのである。
初代インプレッサ登場から12年。インプレッサの開発チームはつねに前進を続けてきた。
そしていまも世界のどこかで実験車は走り続けている。
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